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日々安穏

ここは私こと小鑿弓鹿と中の人が徒然と気ままに書き記す雑記です。

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修学旅行、来年は受験の年ね。
入学当時は思ってもいなかった色々な事があったわね。

本当に。

それにしても、この地の信仰は興味深いわね。
史跡もそう。
年月の歩みを感じさせるものは本当に、愛おしいわ。
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ジョセフィーヌ、彼女のありようは美しかった。

彼女は規則正しく在り、けれど母性によって編まれた器の大きさをもっていた。
彼女を美しく見せるありようは大きく三つある。

彼女の背はピッと伸びていて定規を当てれば完璧なまっすぐだった。

彼女に掛かれば混沌とした資料が散らばる部屋も綺麗に整理整頓される。

例えどんなにとげとげしく他に当たるものだって彼女は受け入れる。

その懐のうちに受け入れて包み込み、外の害意から守り抜かんとする。

そんな彼女のありようは美しかった。

だから彼女は愛されて、だからこそ彼女の終わりはあれほど嘆かれたのだろう。

 

もう一度言おう、彼女のありようはとても美しかったのだ。

 

申し遅れた。

この筆を取っている私の名は小鑿弓鹿。

この物語を見届けるただ一人の傍観者でいることしかできなかった女である。

 

彼女との初めての出会いは人伝であった。

紹介したいものがいる、そんな言葉と共に彼女は連れられてきた。

彼女を連れてきたのは私の後輩であった。

後輩はどこかうきうきと、どこか誇るように彼女と連れだって私の前に来た。

彼女こそ、今必要なものだと思う、そう、惚気るような表情で口にしたときは思わず目を丸くしたものだ。

当時私は骨董屋を営んでいた。

後輩は、私の店でアルバイトを行っていたのだ。

そんな中、後輩は彼女を連れてきた。

彼女こそ、今この店に必要だとの言葉を添えて。

私はそんな後輩に、考慮するとの旨を告げると思考の外にすぐに追い出した。

当時、彼女が私の店に相応しいとは思っていなかったからだ。

たしかに彼女のありようは美しかった。

凛とした姿勢にテキパキとした様、何より彼女を見れば誰しもが感じる懐の深さ。

彼女のありようはたしかに美しかったのだ。

そのことを認めるのは当時の私でもやぶさかではなかった。

しかし、やはりあわない、そんな思いを抱いてもいた。

(残念なことにたとえ今でも彼女を置くことに若干の躊躇いを覚えている)

だからその場では結論を出さず、できればその間にもっと良い働き場所を見つけてほしいとさえ思っていた。

 

だが私の悩みは、考えもしないカタチでふいに終わりを迎えた。

 

次に聞いたのは彼女の訃報だった。

次に目にしたのは彼女にすがり泣いている後輩だった。

そこにあったのは踏みにじられ原型をとどめていない彼女の姿だった。

それは惨劇であった。

それは悲劇であった。

それは残酷劇であった。

 

どんな力を加えられたというのだろうか。

彼女は道端の雑草のように踏みにじられくしゃりと捻られていた。

その見る影もない彼女に後輩はもはや叫ぶこともできずただただ嘆き苦しんでいた。

どうして、どうして彼女が、と。

 

後輩は縋りついたまま一昼夜を過ごした。

そんな後輩に見かねたのだろう。

私の幼馴染である所の友人が後輩に声をかけた。

元気を出せ。

新しい彼女を紹介しよう、と。

彼にとっては見る影もなく落ち込んだ後輩を思いやったのかもしれない言葉だが

これはどうしようもないほどに愚かしい言葉だった。

どうしようもないほどに酷い言葉だった。

 

彼女が失われたから新しい彼女を見つけよう。

確かに前向きな発想なのだろう。

後ろ向きになるよりずっと良い。

だがそれは、もっと傷が浅くなってから必要とされる言葉だ。

誰が、彼女の残骸を前に、それもまだ一昼夜しかたっていないというのに切り替えられるというのか。

それは、あまりに思慮に欠ける言葉だった。

だから、返る言葉は決まっていた。

 

それは新しい彼女であってジョセフィーヌではないのだと。

ジョセフィーヌは二度と戻ってこないのだと。

そんな、当たり前の言葉が返ってくることは決まっていたのだ。

 

きっと幼馴染である所の彼もジョセフィーヌの惨劇に動揺していたのだろう。

自分がどれだけ愚かしい言葉を紡いでいたかということをその言葉にはっと気づいた。

 

それは寸劇だった。

どうしようもないほどに滑稽な様だった。

そして何よりどうしようもないほどに現実だった。

もう、取り返しがつかないのだ。

 

彼にできたのは謝罪だけだった。

だが、それでも彼はこのまま後輩を放っておけない。

弔おう、区切りをつけよう。

たとえどれほど悲しくても先に進まなくてはいけない。

そう、言い募った。

 

後輩も、彼がどこまで自分を心配しているのか気づいていたのだろう。

何より、こんな自分の姿がジョセフィーヌを悲しませると気づいていたのだろう。

ジョセフィーヌはきっと望まない。

ジョセフィーヌは自分にとらわれることを望まない。

彼女の素晴らしさを誰より気づいていたのだから。

そう、気づいていたのだろう。

 

のろのろと、しかしはっきりと頷きジョセフィーヌから体を起こした後輩の目が語っていた。

弔おう、と。

自分が心を残してはジョセフィーヌも安堵して生まれ変われぬと。

 

恥ずかしながら私はこの時傍観者でいることしかできなかった。

幼馴染のように声をかけることすらできなかった。

奇妙な圧迫感を感じながらただただ沈黙を守ることしかできなかった。

こんな悲劇を前にしたというのに、涙一つこぼすこともできなかったのだ。

 

そんな私を置き去りに物語は進行していく。

後輩はジョセフィーヌを抱え弔いに行く。

その場でたたずむ私の傍に観客は増え、事情のわからぬものも増えていく。

彼らは私に問う。

何があったのかと。

そんな彼らに私は返す言葉が思い浮かばなかった。

言葉に迷い、迷い出てきた答えは「命の輪廻についての話、かしら」となんとも迷いに満ちた答えだけ。

彼らが言葉に戸惑い、誤魔化すしかできなかった私は曖昧な笑みを浮かべさらに誤魔化しを重ねるしかなかった。

 

ただ曖昧に時を重ねる中、弔いが終ったのだろう。

後輩が思っていたよりもずっとしっかりした足取りで戻ってきた。

後輩の小柄な体躯に、しかし振り切ったもの特有の大きさを感じた。

後輩は私の幼馴染に向き合うとゆっくりと口を開き言葉を紡いだ。

 

 

命の輪廻に送り出してきたよ、と。

きっと、ジョセフィーヌは綺麗な綺麗な天使になって還ってくるって僕は信じている、と。

 

 

 

その言葉を聞いた幼馴染は後輩と共に純白の天使となった彼女の未来を垣間見た。 


かつて直線的だったその姿は、白く柔らかな翼を構成し、その翼をもって人々へ安息の場を与えるのだろう。
彼女は人々の穢れを、その美しい翼を広げ、自ら汚れながらも拭い去っていくのだろう。
 
 

 
そんな彼女の未来を幻視した幼馴染は思う。







 

それ帰ってきた矢先に地獄行きじゃねーか

 

 

 

 

 

ジョセフィーヌは白い天使となって還る

 

 
 

 
09/12/07 初稿完成
09/12/08 一部改定
12/08/12 現状にそぐわない文を削除


神音ちゃんが企画してくれたお話。
最近色々あったけど、こういうところに私も気をまわしていかなきゃね。
ありがとう。

それはそれとして、今日は楽しみましょうか。
女の子だけで、ね。
 

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プロフィール
  • HN:
    小鑿 弓鹿(&中の人:セージ)
    性別:
    非公開
    自己紹介:
    TRPG歴そろそろ3年半。
    主にアリアンロッドTRPGをやっている。
    この度はTRPG仲間の皆様とオフで機会があり、
    PBW版シルバーレインにて
    それぞれ新キャラを作り新結社を作成した次第。
    主にここには弓鹿の日記・雑記と私のメモ書き・依頼の手順まとめに使用予定。
    画像は小鑿弓鹿のもの。

    画像についての注意事項
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     この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、セージが作成を依頼したものです。
     イラストの使用権はセージに、著作権は深町匡様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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